ケリー基準と最適ロット – 数学的に最適なリスク% を求める

📌 この記事の結論

ケリー基準で計算した「最適リスク%」(例: 勝率50%・RR2.0 なら25%)はそのまま使わず、現実の不確実性を踏まえてフルケリーの1/10〜1/25に抑えるのが正解。1%ルールはケリー基準の超保守版であり、「成長率より生き残りを優先する」合理的な選択だ。

「1 トレードのリスクは何% が最適なのか?」――この問いに 数学的な答え を与えるのが ケリー基準(Kelly Criterion) です。勝率とリスクリワード比から、理論上もっとも資産成長を速める「最適な賭け金の割合」を計算できます。

本記事では、ケリー基準の公式、計算例、なぜフルケリーが危険なのか、そして実務で使う「ハーフケリー」と 1% ルール の関係を解説します。前提として リスクリワード比リスク%ベースのポジションサイジング を読んでおくと理解が深まります。

ケリー基準とは

ケリー基準は、1956 年に物理学者ジョン・ケリーが提唱した、長期的な資産成長率を最大化する賭け金の割合 を求める公式です。ギャンブルや投資のポジションサイジングに広く応用されています。

f* = (b × p − q) ÷ b

f* = 賭けるべき資金の割合(最適リスク%)
p  = 勝率
q  = 敗率(= 1 − p)
b  = 勝ったときの利益倍率(リスクリワード比)

この式は f* = p −(q ÷ b) と書くこともできます。意味は「勝率が高く、RR 比が大きいほど、最適なリスク% は大きくなる」ということです。

計算例: 勝率 50%・RR 比 2.0

p = 0.5, q = 0.5, b = 2.0
f* = (2.0 × 0.5 − 0.5) ÷ 2.0
   = (1.0 − 0.5) ÷ 2.0
   = 0.5 ÷ 2.0
   = 0.25 → 25%

つまり理論上は、勝率 50%・RR 2.0 の手法では 口座の 25% をリスクに晒すのが最も成長が速い という結果になります。「思ったより大きい」と感じたはずです。そしてこの大きさこそが、ケリー基準をそのまま使ってはいけない理由です。

勝率・RR 比別のフルケリー値

勝率RR 1.0RR 1.5RR 2.0RR 3.0
40%−20%(賭けない)0%10%20%
50%0%16.7%25%33.3%
60%20%33.3%40%46.7%
70%40%50%55%60%

f* がマイナスになる場合(例: 勝率 40%・RR 1.0)は 期待値マイナスで、そもそも賭けてはいけない ことを意味します。これは リスクリワード比の記事 で解説した「損益分岐の必要勝率」と同じ話です。

なぜフルケリーは危険なのか

ケリー基準が示す f*(フルケリー)は「資産成長率を最大化する」値ですが、実戦でそのまま使うのは極めて危険 です。理由は 3 つあります。

理由 1: ドローダウンが極端に大きい

フルケリーは「成長率の最大化」だけを目的とするため、途中の ドローダウン を一切考慮しません。リスク 25% で運用すると、数回の連敗で口座の 50〜70% を失うことも珍しくありません。理論上は最速で増えても、現実のメンタルがその変動に耐えられません

理由 2: 勝率・RR の推定誤差で簡単にオーバーベットになる

ケリー基準は「勝率と RR が正確に分かっている」前提です。しかし実際の勝率・RR は 過去の実測値であり、未来も同じとは限りません。勝率を 55% と見積もって実際は 48% だった場合、フルケリーは大幅なオーバーベット(賭けすぎ)になり、破産確率が急騰します。推定が少しでも甘いと、フルケリーは致命傷になります

理由 3: オーバーベットのペナルティは非対称

ケリー値より小さく賭ける(アンダーベット)と成長がやや遅くなるだけですが、ケリー値より大きく賭ける(オーバーベット)と 成長率が急激に悪化し、賭けすぎると期待成長率がマイナスにすらなります。つまり「少なめに賭ける」方がはるかに安全です。

実務的解: ハーフケリーとフラクショナルケリー

これらの理由から、プロは フルケリーの一部だけを使う「フラクショナルケリー」 を採用します。代表的なのが ハーフケリー(フルケリーの 1/2) です。

ハーフケリーには優れた性質があります。理論上、期待成長率はフルケリーの約 75% を維持しつつ、変動(ドローダウン)は約半分に抑えられます。「成長をわずかに犠牲にして、リスクを大きく減らす」という、極めて割の良いトレードオフです。

方式勝率50%・RR2.0 の場合期待成長率ドローダウン
フルケリー25%最大(100%)極端に大きい
ハーフケリー12.5%約 75%約半分
1/5 ケリー5%約 36%かなり小さい
1% ルール1%低いが安定非常に小さい

1% ルールはケリー基準の超保守版

上の例では、フルケリー 25% に対して 1% ルールフルケリーの 1/25(約 0.04 ケリー) という、極めて保守的な水準です。なぜここまで小さくするのでしょうか。

  • 勝率・RR の推定が不確実: 個人トレーダーの実測勝率はサンプルが少なく信頼区間が広い。誤差を見込んで大幅に割り引く必要がある
  • 勝率は環境で変動する: 相場の地合いが変われば勝率も RR も変わる。固定値ではない
  • 生き残りが最優先: 成長率より「破産しないこと」を優先するなら、ケリーよりはるかに小さくするのが合理的

つまり 1% ルールは「ケリー基準を、現実の不確実性を踏まえて極端に保守化したもの」と理解できます。ケリー基準が示すのは”上限の目安”であり、実際にはその数分の 1 に抑えるのが正解 です。自分の手法のフルケリーを計算してみて、その 1/10〜1/25 程度に収めるのが現実的なリスク% の決め方です。

計算したリスク% を実際のロットに反映する

ケリー基準で「自分の手法に適したリスク%(フルケリーの数分の 1)」が決まったら、あとはそのリスク% を毎回のロットに反映するだけです。リスク%ベースのポジションサイジング の式で、損切り幅から適正ロットを逆算します。

TraderIsMe の Auto-Lots Calculation EA なら、決めたリスク%(例: 1%、2%)を設定しておくだけで、損切りラインから適正ロットを自動算出します。ケリー基準で導いた「自分にとって最適なリスク%」を、毎トレード機械的に守れます。

セットアップは 無料 EA の使い方(共通セットアップ)、機能詳細は Auto-Lots Calculation EA マニュアル をご参照ください。

まとめ

  • ケリー基準 = f* = (b × p − q) ÷ b。勝率と RR から成長率を最大化するリスク% を計算する
  • 勝率 50%・RR 2.0 のフルケリーは 25% と非常に大きく、そのまま使うのは危険
  • 危険な理由: ①DD が極端 ②推定誤差で簡単にオーバーベット ③オーバーベットのペナルティは非対称
  • ハーフケリーなら期待成長率は約 75% を保ちつつ DD は約半分。実務ではフラクショナルケリーが基本
  • 1% ルールはフルケリーの 1/25 程度の超保守版。ケリーは”上限の目安”、実際はその数分の 1 に抑える
  • 決めたリスク% は Auto-Lots Calculation EA でロットに自動反映できる

ケリー基準は「最適リスク% には数学的な答えがある」ことを教えてくれます。ただしその答えをそのまま使うのではなく、現実の不確実性を踏まえて大きく割り引く ことこそが、長期的に生き残るトレーダーの知恵です。

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